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保護者・教育活動に携わる方へ

こどもバケツトイレ

こどもバケツトイレとは

こどもバケツトイレは、子どものうんち(大便)に豊富に含まれる腸内細菌と、米糠などに付着している天然酵母による共生発酵作用で、うんちやおしっこを衛生的に処理する、バイオトイレの一種です。おもに、小〜中学生や幼稚園児・保育園(こども園)児の食育・便育での活用を想定しています。構造や原理はとても簡素で、15Lくらいの丈夫なバケツに米糠を入れ、上(バケツの開口部)に洋式便座をのせただけのものです。使用後は、水で流す代わりに、付属のふたを閉めます。

うんちがたまったら(小学生の場合10人分くらい)、便槽の米糠とこねあわせ、味噌のように密封状態で発酵させ、発酵が完了して、香りの変化がなくなったら、肥料として活用することができます。(米糠の状態や大便の腸内細菌の状態によって差異はありますが、発酵香は、洋梨のような香りからぬかみそのような香りに変化していきます。)「お口とおしりのあなと大地とは、みんなつながっている」ということの哲学的な気づきのある、教育効果が高く、環境にもやさしいバイオトイレです。バケツや洋式便座は、リユースのものでもつくることができ、工事も不要ですので、思い立ったら、すぐに実践することができます。

ほんとうに使えるの? 〜子どもの腸内細菌について〜

一口に人の腸内細菌といっても、世代によって大きく変化します。

結論からいえば、ちょうど小学生や中学生くらいの子どもが、一生のうちで最も良好な状態の腸内細菌をもっているとされています。小学生の場合、悪玉菌の存在はほぼゼロに近いレベルだとする学術研究報告もあります。

よく、赤ちゃん(乳児期)のうんちはきれいだといわれることがありますが、乳児期はまだ抵抗力が弱く、腸内細菌も不安定です。たしかに、善玉菌の割合は大きいのですが、かなり不安定であり、一時的には悪玉菌に負けそうになることもあります。乳児の大便の状態が不安定になるのも、腸内細菌がの状態が不安定なためです。

幼児期(幼稚園児くらい)になると、腸内細菌が安定しはじめ、毎日バナナうんちが出るようになります。

児童期(小学生)は、食品添加物が少なく、栄養バランスのよい学校給食を食べていることもあり、腸内細菌の状態が最良となります。健康な子どもの腸内細菌の割合は、ビフィズス菌やその他の乳酸菌のような善玉菌が約2割、バクテロイデスやユウバクテリウムといった中立菌が約8割、クロストリジウムなどの悪玉菌はほぼゼロとされています。この状態は、20歳代くらいまで(女子の場合は、さらに長く)続きます。

しかし、40歳代くらいから、腸内細菌の割合は大きく変わりはじめ、60歳代までには、善玉菌と悪玉菌の勢力関係が逆転するともいわれています。人のうんちが汚い(不浄なもの)という思い込みが持たれている理由のひとつと考えられますが、前述のように、健康な子どもの場合は、そのような思い込みとは全く違うことがお分かりいただけるでしょう。

実際に、「まごわやさしい」を食べた小学生くらいの子どものうんちのにおいを注意深く嗅いでみてください。嫌な臭いはなく、ヨーグルトや発酵した糠床のようなよい香りが感じられるはずです。

実際に、プロバイオティクスヨーグルトや整腸薬などで使われている「人由来のビフィズス菌(乳酸菌)」というのは、もともとは、子どもの大便から採取された菌叢から、抗菌剤や抗生物質を含む選択培地を使って繰り返し分離培養されたものです。(遺伝子組み換えなどで人工的にできたものではありません。)このような善玉菌がたっぷりの子どものバナナうんちを落としてもらうトイレですから、正しく使えば、とても衛生的に使えるというわけです。ご安心ください。

※ただし、細菌性・ウイルス性疾患や食中毒を感染・発症している子どもの場合は、感染のおそれがありますので、健常児と同じトイレを使わないよう、注意が必要です。

防災にも貢献の可能性

地震や風水害といった激甚災害が起きると必ずといってよいほど起こる問題のひとつに、トイレの衛生問題があります。こどもバケツトイレは、避難場所にもなる小学校や中学校での使用を想定していることから、速やかに衛生的なトイレの安定確保ができます。

実際には、子どものうんちをこねあわせた米糠を発酵促進材として、もう一度便槽に戻し、これを成人避難者用のトイレとして活用します。(子ども避難者用のトイレは、いつものこどもバケツトイレと同じ使い方で使います。)

文責:井田 裕之(博士(農学);銀鮒の里学校 発起人)